おくりびと
モントリオール世界映画祭でグランプリをとった日本がらみの映画は過去2作品あった。
1983年 『未完の対局』 監督:佐藤純彌、段吉順 (日本・中国)
2006年 『長い散歩』 監督:奥田瑛二 (日本) 。
三本目が滝田洋二郎監督の 『おくりびと』だった。
モントリオール世界映画祭は3大映画祭【カンヌ、ベルリン トロント(ヴェネツィアはトロントに観客動員で負けているらしい・・・)】に比べて知名度がないので、グランプリと言っても「ふーん」程度だった。
「おくりびと」も地味な佳作かな・・・DVDになったときにチェックしてみるか的作品だった・・・ところが、口コミで草の根的にファンが増え、映画などあまり見ていない私の母親でさえ元木の所作にしびれてしまい、元木がね、元木のね・・と連呼する。
「ふーん」で始まったこの映画は、口コミで「ほう」になりオスカーノミネートで「へぇー!」に変わり、受賞で「うぉー!」になった。
作品は「稀代の傑作」ではなく「心温まる名作」である。日本映画もまだまだ捨てたもんじゃない。イケメンと美少女映画以外でもヒットする力がある。ましてや、こんな地味な題材で・・・
但し、元木ばかりではない。周りの脇役陣がオールスターキャスト。この人たちのしっかりした演技が元木を際立たせた。この映画の元木の演技は周防監督の「シコふんじゃった」と重なるところが多々ある。そう言う意味では小器用な役者ではないかもしれないがツボに入ったときの演技は群を抜いている。それが私の母が元木がね・・・となる所以である。
すでに、元木にジャニーズ出身というイメージは無くなった。役者元木である。悲しいかな、役者と歌手とバラエティタレントの間をフラフラしている中居は「私は貝になりたい」で本当に貝になってしまった。私の母が嬉々として見に行ったのに、中居の芝居に激辛のカラムーチョだった。中高年を感動させるスキルは無かったようだ。日本アカデミー賞でも惨敗の憂き目をみた。
物事はすべて完璧ではない。「おくりびと」だって例外ではない。この映画の数少ない失敗(あまり目立たないけど)は広末の起用だ。私は広末ファンだ。しかし、彼女のキャラでは厳しい役だった。地味な映画には華が欲しいのは分かるし、今の世の中、原節子のような女優を探すこと事態が不可能かもしれない。でも、広末は残念ながらこの映画では浮いていた。舌っ足らずな口調で話せば話すほど広末をこの映画からおくりだそうかと思った。でも、滝田監督のお気に入りっぽいからしょうがないか。
しかし、ポルノ映画出身の監督には名監督が多いというジンクス通り「痴漢電車シリーズ」の滝田監督は男達に握らせる事から転じて、自らの手でオスカーを握ったのである。
さらば、峰岸・・・宮古島のトライアスロンでの雄姿はもう見られない・・・